しだれ桜

わたしが住む上越市吉川区源地域は実はしだれ桜の名所である。

樹齢300年ほどのしだれ桜が3本。


老木の桜の幹を目の前にすると

桜がいかに人々と生きてきたか、人々がいかに桜と生きてきたか、

そんなことを想う。

花の時期のみ桜を愛でるのではなく、花のない時期こそ心を寄せ、
この地域の美しい桜を残していくお手伝いをしたいと思い

昨年の春、『吉川三大枝垂れ桜を守る会』の仲間に入れていただいた。


今年の桜はどんな様子だろうと気になっていたところに

誘導版設置の連絡を受けて、ランニングついでに村松家のしだれ桜を見に行ってきた。


写真は樹齢300年の桜の『生』を支えてきた村松家の現在の当主村松哲夫さん。
ここは江戸時代中期の儒教学者、村松蘆渓の生家。
村松さんのお庭でコーヒーをいただきながら桜を鑑賞。

豪雪地、老木のため傷みもみられるようになり、
平成28年には樹木医による治療も。

今日も20℃を超える陽気で今年は開花が早そうとのこと。
蕾が膨らんできて枝もいい具合に垂れてきていた。



いつ咲くかわからないから、またいい。

わたしは守る会として

村松家の観桜会では和服でおもてなしをしたいと考えている。
是非、いらしてください。

詳細は後日。


中学二年の時の国語の教科書で

大岡信さんの『言葉の力』 というわたしの人生観を変えてくれた文章と出逢う。

少し長いけれど、一部引用します。


❀❀❀❀❀引用はじめ❀❀❀❀❀

 京都の嵯峨に住む染織家志村ふくみさんの仕事場で話していたおり、志村さんがなんとも美しい桜色に染まった糸で織った着物を見せてくれた。そのピンクは淡いようでいて、しかも燃えるような強さを内に秘め、はなやかで、しかも深く落ち着いている色だった。その美しさは目と心を吸い込むように感じられた。

「この色は何から取り出したんですか」

「桜からです」

と志村さんは答えた。素人の気安さで、私はすぐに桜の花びらを煮詰めて色を取り出したものだろうと思った。実際はこれは桜の皮から取り出した色なのだった。あの黒っぽいごつごつした桜の皮からこの美しいピンクの色が取れるのだという。志村さんは続いてこう教えてくれた。この桜色は一年中どの季節でもとれるわけではない。桜の花が咲く直前のころ、山の桜の皮をもらってきて染めると、こんな上気したような、えもいわれぬ色が取り出せるのだ、と。

 私はその話を聞いて、体が一瞬ゆらぐような不思議な感じにおそわれた。春先、間もなく花となって咲き出でようとしている桜の木が、花びらだけでなく、木全体で懸命になって最上のピンクの色になろうとしている姿が、私の脳裡にゆらめいたからである。花びらのピンクは幹のピンクであり、樹皮のピンクであり、樹液のピンクであった。桜は全身で春のピンクに色づいていて、花びらはいわばそれらのピンクが、ほんの先端だけ姿を出したものにすぎなかった。

 考えてみればこれはまさにそのとおりで、木全体の一刻も休むことのない活動の精髄が、春という時節に桜の花びらという一つの現象になるにすぎないのだった。しかしわれわれの限られた視野の中では、桜の花びらに現れ出たピンクしか見えない。

❀❀❀❀❀引用おわり❀❀❀❀❀




愛娘には櫻子と名付けた。



「春生まれだから櫻子ちゃんなんですね」、と言われるので

「はい、そうです」と答えているのだけれど、本当は違う。

わたしは中学二年でこの文章と出逢い、桜をとおして『もののみかた』を学んだ。

それからは桜の幹がとても好き。


夫は幹典、わたしは美名子
娘は櫻子

『幹が美しい櫻』

娘に話すのは何年先だろう。

lineaとむすひ

夫の夢をかなえるため上越吉川区へ移住、農的暮らし 夫は蔵人、わたしはフリーパタンナー、娘と棚田で米づくり 『linea』はパターン事業の屋号、『むすひ』は農園名 『もんぺ製作所』を立ち上げました

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